LLA第36回全国大会(96.7.29-31)

情報交換の広場「CALLの広場」

語学を学び教えるための資源としてのコンピュータ

コーディネータ
尾関 修治(中部大学;ozeki@clc.hyper.chubu.ac.jp)
提案者
西納 春雄(同志社大学;hnishino@mail.doshisha.ac.jp)
三枝 裕美(名古屋外国語大学(非常勤);saigusa@gem.bekkoame.or.jp)
南  紀子(創価女子短期大学;minami@t.soka.ac.jp)
朝尾幸次郎(東海大学;kojiasao@keyaki.cc.u-tokai.ac.jp)

CALLとは何か

CALL = Computer Assisted Language Learningとは、コンピュータによって支援される語学学習の略称である。一般的には、テープやビデオの利用を主体としたLLにコンピュータを組み合わせたものと考えてよい。

 語学教育でのコンピュータ利用は視聴覚機器の制御やドリル型練習問題の提示をはじめとして様々なものがあるが、ここでは「ハイパーメディア」と「インターネット」をキーワードとして提案と議論をすすめたい。

マルチメディアとハイパーメディア

「マルチメディア」が文字、映像、音声、動画などの複数のメディアが組みあわされて情報を伝達するという概念であるのに対して、「ハイパーメディア」は、情報がデジタル化され、さらに情報間のリンクを実現した、コンピュータ上でのみ利用可能なメディアである。つまり、映像や音声や文字を提供する各メディアを意識することなく情報の関連性によってシームレスに(つなぎ目なく)利用が可能なもののことを指す。

 ハイパーメディアを最初に一般的に利用可能なものにしたのが、アップル社マッキントッシュに標準添付されたHyperCardであった。HyperCardは、情報を利用者の主体的な要求によって整理し関連づけるという教育の道具として重要な機能を持ち、さらに映像や音声などのメディアの形態に関わらず平易な使い勝手を提供したことで、教育現場で広く利用され多数の教材(スタック)を生み出すこととなった。また、教師による教材作成に利用されるだけでなく、学習者が自らの知識を外在化し、批評の対象とし、他の学習者と共有するための道具として卓越した特徴を持っている。  情報のリンクを自由にたどっていけるというハイパーメディアの概念は、インターネットの普及とWWWとそのブラウザ(Netscapeなど)の出現でさらに身近なものなった。

ハイパーメディアからインターネットへ

インターネットが教育に利用されるのは主に以下の2つの目的である:
  1. 少ないコストで世界中の多人数とコミュニケーションをとるための手段として。
  2. 教室の中だけでは得られない多方面にわたりしかも詳細な文字・音声・画像情報を収集するため。
1については電子メールやその応用としてのメーリングリスト、ネットニュース、さらにWWWで学生がホームページを作成することによって実現されている。2については、新聞記事や電子辞書などの各種の情報検索サービス、WWWの散策的利用(ネットサーフィン)や検索(ネットサーチ)によって世界中から容易に情報収集が可能になっている。また、両者の組み合わせ、つまり電子メールなどを利用して多数の人々にアンケートを実施し、生の情報を世界から集めるということも教育現場で行なわれている。

 このいずれもが、外国語教育と直接結びついている。すなわち、外国語教育がコミュニケーションの実践を目的としたものであるという点で1と、海外の事情を知ることが外国語教育の重要な目的であり動機でもあるという点で2と関わっている。このように語学教育の目的と正しく合致しているという点で、インターネットとそれを利用するソフトが語学教育の現場で使えるようになったことは語学教育の方法に決定的な影響を与え始めている。

提案と議論

以上の流れをふまえ、ハイパーメディアとネットワークを利用した語学教育の実践例を提案者に紹介していただき、活発な議論を展開したい。各発表内容は概略以下の通りである:
西納春雄(同志社大学;hnishino@mail.doshisha.ac.jp)
情報検索と時事英語教育:コンピュータネットワークを利用して情報を検索し、その結果得られた生の情報を時事英語の授業で活用している実践を紹介。
三枝裕美(名古屋外国語大学(非常勤);saigusa@gem.bekkoame.or.jp)
HyperCardでの中国語教材の作成と利用:発音図解スタック、音節表スタック、応用会話スタック、中国案内、中国音楽スタックなど、中国語の特性と学習者の進度を考慮した自作HyperCardスタック教材のデモの他、WWWを利用した実践を紹介。
南 紀子(創価女子短期大学;minami@t.soka.ac.jp)
WWW と電子メール利用による国際コミュニケーション教育:海外の大学生との電子メール交換、WWWホームページの作成と公開を通じた実践的なコミュニケーション教育の報告。特に、資源が限られたネットワーク環境の中でどのような利用が可能か提案。
朝尾幸次郎(東海大学;kojiasao@keyaki.cc.u-tokai.ac.jp)
WWWによる英語ライティング教室:WWWは人と人とをつなぐ新しいプラットフォームを提供している。学習者がWWW上で作品を読み、作品を書くことによってみずからが読者となり、作者となり、みずからの実体験として学習活動を進めた実例を紹介。

さらに議論を深めるために

本ワークショップは、ハイパーメディアの語学教育での利用について議論を行なう研究会、ハイパーメディア研究会(HWG)のメンバーの一部によって行われています。ハイパーメディア研究会の詳しい情報については、
 尾関修治(中部大学);ozeki@clc.hyper.chubu.ac.jp に連絡するか、または
 http://langue.hyper.chubu.ac.jp/hwg/ をご覧ください。
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