豊橋技術科学大学語学センター1996年度外国語教育セミナー
ワークショップ1

インターネット利用の語学教育

−ネットワークコミュニケーションの実践−

尾関 修治

中部大学国際関係学部
ozeki@clc.hyper.chubu.ac.jp; http://langue.hyper.chubu.ac.jp/ozeki/

インターネットの爆発的普及の主な立役者はWWW (World-Wide Web)です。マスコミで「インターネット」とか「マルチメディア」といって取り上げられているのもほとんどがこのWWWを指しているようです。

しかし、WWWは発信者の情報を静的に表示する「データベース」「出版」的性格が強いのに対して、インターネットでは双方向のコミュニケーションもたくさんなされています。双方向であって、相手が世界各地にいるということであれば、語学教育でこれを利用しない手はないでしょう。

このワークショップではインターネットを利用したコミュニケーションを実際に体験していただいて、語学教育での利用方法について議論したいと思います。以下、コミュニケーションがリアルタイムに進むか、文字が中心か音声や画像が中心かという分類をして解説します。

非同時・文字

メーリングリスト
電子メールを使って同時に多数の相手に発信しあうことで実現した一種の電子会議システムです。参加者が特定可能で、しかも各地に散らばっているときに特に便利です。議論が発散しがちで、どちらかというとおしゃべりになりがちです。学生同士のコミュニケーションのために利用される他、クラス間交流の情報交換にも使われています。

ネットニュース
古くから存在する電子会議システムです。世界中に実にさまざまな話題の無数のニュースグループが存在し、そのほとんどは英語を使用していますので、学生が各自の特殊な興味にそって英語で議論するには理想的です。一方で、議論が活発すぎてサーバーの負荷が大きかったり、教育現場にはふさわしくない会議室も多数存在するという問題もあります。学内で授業用にローカルのニュースグループを設定して利用するという方法もあります。
WWW
学生が書いたものを貼り付けて掲示板のように使用したり、各自のホームページを公開してコメントを求めたりという使い方ができます。クラス間交流を電子メールで行っている場合にお互いの様子をそれぞれのホームページで紹介するという使い方もできます。

非同時・音声

音声ファイルの転送
comenius.comなど、教育目的に限っても音声データを提供してくれるところはあちこちにあります。電子メールに添付して音声ファイルを送りあってそれぞれ手元で再生するということもできます。文字主体のコミュニケーションの補助的な手段として使えるでしょう。

同時・文字

IRC
インターネット・リレー・チャットといい、離れた多数の人々がキーボードをうって文字で会話できるシステムです。専用のソフトを使うと便利に使用できます。公開されているだれでもが参加できるチャンネルの他、ローカルにチャンネルを設定して使用することもできます。会話的・口語的にやりとりができて、しかも文字を目で追うことができますので、オーラルコミュニケーションが苦手な学生でも一定の語学力があれば会話を楽しむことができます。また、最近はWWWを利用したチャットも普及してきているようです。

MOO
IRCに似ていますが、場面を設定して、その中で自分の役割を演じながら不特定多数の人たちと会話を楽しむシステムです。英語学習者向けには、SchoMOOze Universityという有名な仮想大学があり、仮想キャンパスの世界で世界中の学習者たちが会話を楽しんでいます。会話だけでなく、自分の好きな世界を記述していける楽しみがあります。

同時・音声+画像+文字

RealAudio
音声ファイルを転送して手元で再生するのではなく、音声データをリアルタイムで流すシステムです。簡単にいえばインターネットを利用したラジオです。これを双方向で語学学習に利用している例はまだ知りませんが、海外との音声によるやりとりや学生のスピーチなどを「放送」するという使い方が考えられます。

CU-SeeMe
ビデオ入力が可能なコンピュータとインターネットの組み合わせで、簡単なテレビ電話を実現したシステムです。3カ所以上で同時に顔を見ながら音声でやりとりすることも可能です。音声や画像の質にまだ問題はありますが、ネットワークの高速化が進めば現在よりはるかに快適にしようできるようになるでしょう。電子メールなどを使ったコミュニケーションを補完する形で使用することが考えられます。また、公開されているリフレクタ(中継器)もあり、世界のどこかの誰かと突然であって顔を見て話をする経験が簡単にできます。

QuickTime Conference
CU-SeeMeがフリーソフトであるのに対して、各社から電子会議システムが発売されています。QuickTime ConferenceはApple社の製品で、リフレクタなしでbroad castができることや、「黒板」を共有して文字や絵を見せあい手をいれあいながら会議をすることができるという特徴もあります。


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