1997年に読んだ本

−極私的読書ノート−

 このリストは全くもって無節操かつ全方位的な私の読書行動の記録をとどめるために作成・更新しているもので(特に図書館から借りだした本の記録を残す必要があって)、個々の著作について責任ある書評を提供しようとするものではありません。また、原則としてお仕事関係の本は除いています。(★=読まなくてもよかった。人には勧めない。★★=まあまあ。読んで損はなし。★★★=スバラシイ。目から鱗。おすすめ。)                    

1997年私の読書(現時点での)トップ5

第1位
村上春樹『アンダーグラウンド』講談社.(4月)
第2位
コリン・パウエル『マイ・アメリカン・ジャーニー』角川書店.(1月)
第3位
エド・レジス『アインシュタインの部屋』(上・下)工作社.(9月)
第4位
佐伯 胖『新・コンピュータと教育』岩波新書.(6月)
第5位
ハンク・ホイットモア『急成長のCNN−世界を変える米メディア企業の内幕』(上・下)テレビ朝日.(7月)

1997年12月

井沢元彦『逆説の日本史 3.古代言霊編[平安建都と万葉集の謎]』小学館.1995.6. 1,600円
1997.12.読了。名東図書館から借り出し。★★
井沢元彦『逆説の日本史 1.古代黎明編[封印された「倭」の謎]』小学館.1993.10. 1,600円
1997.12.読了。父から借り出し。★★
井沢元彦『逆説の日本史 2.古代怨霊編[聖徳太子の称号の謎]』小学館.
1997.12.読了。名東図書館から借り出し。★★

1997年11月

五十嵐享平ほか『絶滅動物の予言』情報センター出版局.1992.5. 2,000円
1997.11.読了。名東図書館から借り出し。★★★
過去1万年間に恐ろしい勢いで他の生物種を絶滅させ続けてきた人間と絶滅した動物たちの物語。マイケル・クライトンが、地球にとっての人類の役割を、短期間地上に現れて他の弱い生物種を絶滅させ強い種だけが残るようにして自らも絶滅していく「掃除屋」と位置づけていたのが思い出される。
ディビッド・カーンズ&ディビッド・ナドラー『ゼロックスの反撃』ダイアモンド社.1993.3. 2,800円
1997.11.読了。名東図書館から借り出し。★★
80年代、低迷したゼロックスを立て直した当時の会長自身による記録。コピー機の発明とゼロックスという企業の成立の物語として興味深く読んだ。当事者が書いているものなので当然のことながら前任者に厳しく自分に甘い書き方になっている。この本の中での評価は別として、コピー機の発明・普及とPARCの設置という2度の革命−文字どおり世界を変えることを成し遂げたという点でゼロックスという会社はすごかったと思う。同時にそのような世界を変えていく気運や体質では生き残ることができない企業論理の寂しさも感じる。
カール・セーガン『コンタクト』新潮文庫.1988.7.
1997.11.2/3読んだ。★★★
山根一眞『「メタルカラー」の時代』小学館.1993.9. 2,600円
1997.11.読了。名東図書館から借り出し。★★★
山根一眞と日本のエンジニア84人との対談集。おもしろい。でも山根一眞はしゃべりすぎ。実際にこのようにしゃべったにしても、原稿ではもっと整理すべきだ。図版も足りない。しゃべるだけしゃべって、編集者のテープ起こしをさせたお手軽本。でもエンジニアの真摯な姿に救われる。理論的極限までビデオテープの製造技術を高め(磁性体粒子2個半で一個の情報を記録!)、そのあげく梱包用粘着テープより安くなってしまったというのが悲しい。

1997年10月

東 英子『くんぺい童話館物語』河出書房新社.
1997.10.読了。名東図書館から借り出し。★★
折口 透『自動車の世紀』岩波新書.1997.9. 660円
1997.10.読了。★★★
ポルシェ博士が1900年にすでにハブモータ、ハイブリッドの電気自動車を開発していたことに驚嘆。ヨーロッパを中心とした100年間の自動車の変遷が楽しい。自動車メーカーの関係をまとめた図表がほしい。
魚住 昭『特捜検察』岩波新書.1997.9. 640円
1997.10.読了。★★★
東京地検特捜部がロッキード事件、リクルート事件などでどのように活躍したか、語られることのなかった特捜部の姿を当事者へのインタビューを中心に構成している。親分子分の任侠道の力か金の力か、二者択一の政界の姿が悲しい。理性の入る余地はないのか。

1997年9月

エド・レジス『アインシュタインの部屋』(上・下)工作社.1990.9. 1,800円
1997.9.読了。名東図書館から借り出し。★★★
「天才たちの楽園」プリンストン高等学術研究所の歴史。アインシュタイン、オッペンハイマーをはじめとする偉大なる数学者、物理学者等々の物語をかたりつつ、現代の科学理論への最高の入門書となっている。すばらしく面白い。

1997年8月

巽 孝之『恐竜のアメリカ』ちくま新書.1997.8. 660円
1997.8.読了。★★
私情協の会議の帰りに市ヶ谷駅前の書店で衝動買い。新幹線車中でほぼ読了。アメリカ文学に伝統的に潜む、恐竜をはじめとする巨大生物のイメージをあばく。
ロバート・ズブリン『マーズ・ダイレクト--NASA火星移住計画』徳間書店.1997.5. 1,800円
1997.8.読了。名東図書館から借り出し。★★★
軌道上で大型宇宙船を組み立てるとか月面基地から出発するとかいった従来の金を食い複雑な火星有人探査計画に対して、火星に直接飛び直接帰るという計画を非常に綿密に計画したちゃんとした本。燃料生成プラントをつんだ帰還用無人着陸船を先に送り込み、火星の二酸化炭素などの資源を利用して帰還用燃料を生成したところで有人着陸船(帰還用燃料などを積む必要がないので小型ですむ)を送り込むというアイデアが秀逸。さらには火星への大規模な入植計画の検討まで話が進む。アメリカの開拓時代と比較しながら検討しているところが面白く、こういうのをまじめに検討するにはやはりアメリカ人でないとできないかーと納得。やっぱり夏休みにはこんな本を読まなくちゃ。
豊田穣『飛行機王中島知久平』講談社文庫.1992.10. 620円
1997.8拾い読み。名東図書館から借り出し。
海野福寿『韓国併合』岩波新書.1995.5. 650円
1997.8.途中まで。名東図書館から借り出し。
Rob DeSalle and David Lindley. The Science of Jurassic Park and the Lost World or, How to Build a Dinosaur. BasicBooks. 1997.
1997.8.読了。★★★
FLEAT III学会発表のためにカナダのビクトリアに滞在中にEaton Centerというmallの書店で購入。Jurassic Parkでマイケル・クライトンが描いた恐竜復元には科学的にさまざまな問題があって、それがLost Worldでフォローされたことがよく分かる。子どもでも分かるように、かつ手を抜かずにきっちりと書かれているという点で、良質の科学啓蒙的娯楽読み物になっている。Beacon Hill Parkの涼しい木陰のベンチでのんびりと読んだのが思い出になった。
網野善彦『日本社会の歴史』(上・中)岩浪新書.1997.4, 7.各630円
1997.8.読了。★★
カナダへの機上、宿泊先で読了。

1997年7月

共同通信社ペルー特別取材班『ペルー日本大使公邸人質事件』共同通信社.1997.6. 1,500円
1997.7.ほぼ読了。★★★
グラハム・ハンコック、ロバート・ボーヴァル『創世の守護神』(上・下)翔泳社.1996.10. 1,500円
1997.7.途中で止めた。名東図書館より借り出し。★
ハンコックの本は避けていたのだけれど、たまたま図書館で目について借り出し。退屈。子どものころからあちこちで読んできたお話のつぎはぎ。自分でフィールドワークしない人の限界。この手の本にはまって喜んで読んでしまうという人は、日ごろの読書がちょっと足りなさ過ぎるのではないかなあ。
スティーヴン・ジェイ・グールド『ワンダフル・ライフ』早川書房.1993.4. 2,600円
1997.7.大体読んだ。名東図書館より借り出し。★★★
バージェス頁岩の化石群の再検討によって明らかになってきた、カンブリア紀の奇天烈な動物たちの姿。単純な生物から現在の複雑な生物に進化してきたという概念を覆す。
ハンク・ホイットモア『急成長のCNN−世界を変える米メディア企業の内幕』(上・下)テレビ朝日.1991.4.
1997.7.読了。名東図書館より借り出し。★★★
CNNの開設と初期の発展の物語。息をつがせぬおもしろさ。テッド・ターナーが1978年にCNNの開設を決意したとき、誰しもが嘲笑した。そのアイデアに一匹狼たちが集まり金が集まり具体化していく姿は感動的。1980年6月1日の放送開始に寄せたターナーのことばから:「他者がひるむとき、確信を持って行動すべきこと/冷笑主義のはびこる中で積極的な行動力を創造すること/情報なき人々に情報を与えるべきこと/選択なき人々に選択を与えるべきこと」…以来「この世が終わるまで」止まることなくニュースを流し続けている。世界の指導者たちがお互いの行動・発言をCNNを通じて生放送で知らせあっているということだけをとっても「生放送で」「世界の現場から世界各地へ」ニュースが流れているということの革命的意義を考えさせられる。
マイケル・クライトン『エアフレーム』(上・下)早川書房.1997.5.
1997.7.読了。★★★
航空機事故の背後をめぐってというサスペンスもの。クライトンの、現場で日々問題と格闘する人々への共感と、マスコミへの徹底的な不信感が強く現れた作品。
マイケル・クライトン『ロスト・ワールド』(上・下)ハヤカワ文庫.1997.5.
1997.7.読了。★★★
原作は南アのヨハネスブルグで買って、ホテルで読んだ。雨期のアフリカの激しい雷鳴とホテルの庭のシダにたたきつける雨音を聞きながら読むとなかなか臨場感があった。(バーチャルリアリティ?)日本語版は東京への出張の新幹線の中で。

1997年6月

ロバート・リード『インターネット激動の1000日−WWWの地平を切り開くパイオニア たち』(上・下)日経BP社.1997.
1997.6.読了。★★★
妹尾河童『少年H』(上・下)講談社.1997.1.
1997.6.読了。★★★
母から借りた。
佐伯 胖『新・コンピュータと教育』岩波新書.1997.5. 630円
1997.6.読了。★★★
ジェームズ・A・ベーカーIII、トーマス・M・デフランク『シャトル外交 激動の四年』(上・下)新潮文庫.1997.5. 781円
1997.6.半分読んだ。

1997年5月

5月はなんと、1カ月の間に1冊も本を読了しなかった。こういうのは何年ぶりかなあ。それほどまでに忙しく、プライベートなリラックスした時間を持つことができない1カ月間だった。そしてこの状態は6月にも続く。

1997年4月

角田房子『悲しみの島サハリン−戦後責任の背景』新潮文庫.1997.3. 514円
1997.4.読み始め。
安部譲二『囚人道路』講談社文庫.1997.3. 583円
1997.4.読了。★★
近所の書店で衝動買い。北海道の中央道路が明治時代に囚人たちによって築かれた話は吉村昭の小説で既に読んでいた。この忙しいときにこんな本を読まなくてもなあ、と思いつつも一晩で読了。しかし疲れとストレスがたまって集中できないときは、こんな、改行コードを一括削除したら半分の厚さに縮まってしまうような大まかな「歴史小説」ぐらいしか読めなかったりもする。(内容も大まかだよな。矛盾するところもあって。連載小説で1冊にまとめるときに読み返さなかったのかな?)だからビジネスマンのみなさんは通勤電車で文庫本の歴史小説を読むのだなあ。
沢村貞子『わたしの献立日記』新潮文庫.1997.3. 400円
1997.4.読了。★★
昨年亡くなった女優の筆者が22年間記録した献立日記をまとめそれにエッセイを加えたもの。エッセイの中での若い女優さんに対する視線がいかにも「お姑さん」ぽくておもしろい。献立の方は、眺めていると、「そらまめの白ソース和え」とか「五目豆」とか「あま鯛の味噌漬け」とか、食べたくなってしまう。豆と魚と海草。自分の食生活を反省し、何を食べているか記録したくなる。今週末はそらまめでもゆでるか。
村上春樹『アンダーグラウンド』講談社.1997.3. 2,500円
1997.4.読了。★★★
地下鉄サリン事件の被害者へのインタビューをまとめたもの。大部。まず第一に、筆者の、インタビューを受ける人々に対する誠実さに心うたれる。村上春樹にとってこのようなインタビュー集が初めてだからかもしれないが、インタビュイーに対して共感といたわりのまなざしを隠さず、話された中身をねじ曲げずに書かれているという点で「異色」のインタビュー集。逆に職業的ジャーナリストによるインタビュー記事に、話す側の意図をねじ曲げ強引に書く側の自己主張に隷属させるものが多いことを再認識させられる。(もちろんそのようなことは読者が裏付け取材して確認できるわけではないのだが、そう思わせられるほどの「誠実なまなざし」が村上春樹の文章に感じとられるということだ。)さらに、インタビュー集でありながら、村上春樹の小説独特の「記憶への浸透力」が実現されていることに驚く。読み進むうちにいつしか読んでいる側の記憶に入り込み、みずから経験したことであるかのように錯覚させ、時として悪夢としてよみがえる、そのような「小説の力」がこの本にも現れている。もちろん同一のものであるはずがないが、被害者の悪夢が読者の記憶にいつのまにか浸透し追体験することを求めている。そのような意味でも、事件の被害者の記録として成功している。
相田 洋他『新・電子立国4−ビデオゲーム・巨富の攻防』NHK出版.1997.1. 1,500円
1997.4.読了。★★★
相田 洋他『新・電子立国5−驚異の巨大システム』NHK出版.1997.2. 1,500円
1997.4.読了。★★★

1997年3月

M・スコット・ベック『平気でうそをつく人たち』草思社.1996.12. 2,200円
1993.3.ほぼ読了。★★★
三杉隆敏『真贋ものがたり』岩波新書.1996.6. 650円
1997.3.読了。 ★★
美術品の真贋にまつわる古今東西の物語。
NHK取材班『戦後50年 そのとき日本は 第2巻 三池争議・激突「総資本」対「総労働」 新日鉄誕生・攻防・巨大企業と公取委』NHK出版.1995.8. 1,900円
1997.3.読了。名東図書館より借り出し。★★
前半は、戦後最大の労働争議といわれた三井三池炭坑の争議の記録。忙しいときに落ちつかない気持ちで読むのには向いていなくて、労使ともに身勝手なことを言っているだけのように読めてしまう。しかし、生活をかけてぶつかり挫折した労働者の背後でかけ声ばかりでともに戦いもせずともに倒れもせず反省もせずその後何十年も生き残った政治家には怒りを覚える。後半は東京への出張の帰りの新幹線で立ったまま読んだ。ちょっと掘り下げが足りないのではないかな。日本的経営観の功罪とその歴史性についてもっと踏み込んでもよかったのでは。

1997年2月

佐木隆三『法廷のなかの人生』岩波新書.1997.2. 650円
1997.2.読了。 ★★★
近所の書店で衝動買い。さまざまな裁判の傍聴を続け、その中に題材を得て小説を書いてきた著者がつづる法廷での人々の姿。裁いても裁ききれない罪の重さもあれば、被告を裁くよりもそれ以外の社会すべてが裁かれるべき犯罪もある。
ジョン・ダーントン『ネアンデルタール』ソニーマガジンズ.1996.11. 1,800円
1997.2.読了。 ★★★
近所の書店で衝動買い。 東京への出張の往復の車中で半分読み、帰宅してから残り半分読んだ。こわくておもしろい。でも話の展開に無関係なセックスシーンが時折はさまれるのは、せっかくのサスペンスの腰を折られる。こういうものはマイケル・クライトンのほうがもっともらしく書くなあ。
亀谷 了『おはよう寄生虫さん−世にも不思議な生きものの話』講談社+α文庫.1996.10. 680円
1997.2.読了。★★★
名駅三省堂で衝動買い。回虫とか蟯虫というのを一度はおなかに飼ってみたいとあこがれていたけど、でもお尻から6メートルも出てくると大変だろうなあ。寄生虫がまだまだ身近なところにいることに驚いた。
富田 覚『「CD音痴論」を考える』鹿砦社.1997.1. 1,600円
1997.2.読了。★なし。0個。
近所の書店で衝動買い。アナログのレコードと違ってCDの音はピッチが狂っており、CDを聴いていると音痴になる、という本。結局のところ説得に足る根拠が示されない。とぼしい中身をくどくどと繰り返している。B5版両面1枚のチラシで十分。「てにおは」の間違いの多い文章。(私もそうだけど。)デジタルとアナログの質的違いと、「記録」と「再生」の意味を理解しないままこの両者に関わる議論を持ち出してしまったのが著者の過ち。立ち読みのとき、「おっ、結構いいこと書いているじゃないか」と思ったのは、著者の「質問状」に対するソニーからの回答の引用部分であった。ああ。久々の「買っちゃダメ、読んじゃダメ」本。
吉村作治『ピラミッドの謎をハイテクで探る』講談社.1994.5. 1,700円
1997.2.読了。名東図書館より借り出し。★★
タイトルがちゃちだけど中身はよかった。でも、ピラミッドの構造の謎解きが話の中心なのに、その図解が一枚もない!図を載せると呪いがかかってしまうのか?

1997年1月

新崎盛暉『沖縄現代史』岩波新書.1996.11. 650円
1996.1.読了。 ★★
冒頭の南西諸島の地図を見ただけで、自分が沖縄についていかに無知か思い知らされる。 学ぶことの多い本。でも、文体の旧社会党的スタイルが、沖縄の人々の生の声と気持ちを読者に届きにくしていると思う。
スティーヴン・ジェイ・グールド『ワンダフル・ライフ』早川書房.1993.4. 2,600円
1997.1.未読。名東図書館より借り出し。
NHK取材班『戦後50年 そのとき日本は 第6巻 プラザ合意・円高への決断 アジアが見つめた“奇跡の大国”』NHK出版.1996.8. 1,900円
1997.1.読了。名東図書館より借り出し。★★
前半は、1985年のプラザ合意と、それに続く円高とバブル景気、その崩壊を記録したもの。テレビ放映の時はこの回だけ見逃した。(アフリカにいってたんだっけ。)やるべきことをやるべき時にやるのには勇気と根回しと理解が必要で、それができないとどのように地滑り的に事態が悪化していくかの典型的な例。日本の政治・行政の毎度おなじみの「なるがまま」の図式。スピード感という点で、このシリーズの中でも出色の出来。後半は、賠償の名目でアジアに再び経済侵略に乗り出した日本の姿を描く。今こうして、太平洋戦争に負けたように、再び日本経済が凋落しつつあるのは歴史の必然か歴史に学ばない愚か者の自業自得か。非現場主義・非現実的均質主義・孤立主義・権威主義・没価値的教育の罪深さも感ぜずにはいられない。あとがきに、この番組プロジェクトの憲法として「2.学者、研究者、作家など、当事者以外の出演者は一切起用しない。登場する人物は、解説者でなく、時代と生き、苦悩した本人である」とあることに感銘を受けた。
三本和彦『クルマから見る日本社会』岩波新書.1997.1. 650円
1997.1.読了。★★
出張の帰りに名古屋駅で衝動買い。すぐ読み終わった。クルマにまつわる行政(というより役人の権益争い)への怒りとそれに腹を立てない国民とジャーナリストたちへの怒り。内容に繰り返しが多くて散漫。岩波新書1冊分としてはこれでも文字数が少ないが、さらにこの1/3まで縮められそう。
辻井達一『日本の樹木−都市化社会の生態誌』中公新書.1995.4. 820円
1997.1.読了。★★★
雑木林を歩いていると、樹木たちの穏やかな語らいがふと聞こえるような気がすることがある。今度雑木林を散歩したときに、もっと多くの樹木たちと語らうことができるようにこの本を買った。中部大学のキャンパスにはケヤキの巨木たちが整然と植えられている。1年を通して、自分勝手に生き自分勝手に通り過ぎていく人間たちをはるか足下に見おろしながら、説教をたれるでもなくみずからの営みに打ち込む姿、春は何万の新芽を一時に吹き出し、夏は空をおおいつくす葉を茂らせ、秋は枯れ葉を地に放ち、冬は寒風に枝を休ませる姿に、賞賛と畏敬の念を覚えずにはいられない。樹木は語らずに人を教え導く。
NHK取材班『戦後50年 そのとき日本は 第5巻 石油ショック・幻影におびえた69日間 国鉄労使紛争・スト権奪還ストの衝撃』NHK出版.1996.6. 1,900円
1997.1.読了。名東図書館より借り出し。★★
前半は、石油ショックのときに日本がいかに危機管理能力がなく、中東内部の情報にも疎く、外務省内の意思統一さえできなかったかを検証したもの。マスコミも直接現地取材することもなく誤報と憶測を流し続けた。結果は日本お得意の「金を積んで何とかする。」後半は不毛の国鉄労使紛争の歴史をつづったもの。ツケはすべて国民に。
NHK取材班『戦後50年 そのとき日本は 第3巻 チッソ・水俣・工場技術者たちの告白 東大全共闘・26年後の証言』NHK出版.1995.11. 1,900円
1997.1.読了。名東図書館より借り出し。★★
前半は、水俣病を引き起こしたチッソの技術者たちが内部の実験で水俣病の原因が工場排水であることを確信しつつ隠し続けたことを明らかにしたもの。技術者というか技術屋に普遍的に存在する独善性、視野の狭さ、無責任さなどが悲劇を引き起こし拡大し解決を遅らせ続けた事実。後半は全共闘の記録。彼らが歴史に足跡を残すだけのことをしたのか今まで大いに疑問だったが、彼らが自分自身の個人史を変えるだけの力があったかすら疑問に思ってしまった。
リチャード・プレストン『ビッグ・アイ−世界最大の天体望遠鏡の物語』朝日新聞社.1989.10. 2,100円
1997.1.読了。名東図書館より借り出し。 ★★★
1928年に建設を開始して21年かかって完成し、その後40年以上も世界最大の反射望遠鏡として君臨してきたヘール望遠鏡。戦前の技術と職人芸を結集し、その後も絶えず無数のモーター、補助鏡、錘、支柱、電子機器の「つぎあて」を与えられながら育ち続け、もはやどのモーターがどんな動きをしているのかすべてを把握するのは誰にも不可能になってしまった望遠鏡は、機械というより人知を超えた巨大な生き物といってよい。その巨大な生き物と格闘して宇宙の謎に挑戦する天文学者たちの物語。
柳田理科雄『空想科学読本』宝島社.1996.3. 1,200円
1997.1.読了。★★
近所の書店で衝動買い。(ちなみに近所の「楡書房」は単行本の棚の品揃えが非常におもしろい。)すげーおもしろい。ウルトラマンの体長から適正体重を計算して重すぎるとかなんでできているのかなどと「科学的」に考察。2時間で読んでしまった。
柳田邦男『空白の天気図』新潮文庫.1981.7. 600円
1997.1.半分読んだ。
入浴中の読書用。30分ゆったりと湯に浸かるための文庫本。原爆投下1カ月後に広島を襲って甚大な被害を出した枕崎台風を題材とした小説。リラックスして読むにはあまりに悲惨。
塩野七生『コンスタンティノープルの陥落』新潮文庫.1991.4. 440円
1997.1.半分読んだ。
ずいぶん前に買って読んでなかった。塩野七生ものは手を出さないように、つい買ってしまっても読まないようにしてた。読み出したら次から次に読みたくなって買いあさるのがわかっていたから。中日新聞の一面でインタビューに答えているのを読んで、とうとう引っぱり出して読み始めてしまった。そりゃあおもしろいですよ。
ハワード・ジン『民衆のアメリカ史[上]』TBSブリタニカ.1982.5. 1,900円
1997.1.半分読んだ。名東図書館より借り出し。 ★★
図書館で本を借りる楽しみのひとつは、その本がどんなの人たちに読まれているか想像することである。この本が15年の間にかなり大勢の人に読まれたことが、本の傷み具合から想像される。アメリカの歴史を先住民族に対するジェノサイド=民族的虐殺から説き起こしているこの本と、ジャマイカ出身の優等生的アフリカ系アメリカ人のコリン・パウエルの自伝とを偶然にも同時に読むことになったのは皮肉。
前間孝則『「独創」に憑かれた男たち−未踏技術に挑む』講談社.1991.4. 1,600円
1997.1.読了。名東図書館より借り出し。 ★★

日本にもこんなに独創的な技術開発をしている人がいるよ、という本。前半ツマラナクてまいったけど、超伝導の開発・発表・特許取得レースの話からおもしろくなってきた。Top of the Worldのヨロコビと、日本という「田舎」にいることの苦さ。
小長谷正明『脳と神経内科』岩波新書.1996.11. 680円
1997.1.読了。 ★★

いろんな病気が脳とどう関わっているかというお話。気がついてみると、脳そのものについての解説は少ない。脳は臨床的にはまだまだブラックボックスか。
コリン・パウエル『マイ・アメリカン・ジャーニー』角川書店.1995.12. 2,600円
1997.1.読了。 ★★★
原著が出たとき、ペーパーバック版を南アの書店で見たとき、日本語訳が出たとき、とこれまで3回迷ったあげくに読まずに来たが、近所の書店で在庫を見て衝動買い。クリスマスの読書、と思っていたけれど、結局正月開けから仕事を気にしながら読むことになってしまった。 なんということはないし、あまりに優等生的だけれど、パウエルのような人物の自伝を読みたいと思うすべての人を必ず満足させる語り口。飽きさせない。翻訳も上質。「コリン・パウエルのルール」から:「何事も思っているほどは悪くない。朝になれば状況はよくなっている。」アメリカン・ドリームというビジョンもしくは幻想が個人と社会のあり方にもたらす影響と、ビジョンなき日本社会のありさまについて考えた。

尾関のホームページへ戻る                    
OZEKI, Shuji;ozeki@clc.hyper.chubu.ac.jp